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萩ほろほろ うすくれなゐのちりわかれ 恋は畢竟はがれゆく箔 松平盟子 いつのまにやら 萩の季節も過ぎてしまった。 今年小さな萩の苗を買い 畑に植えてみたのだけれど 花を咲かせるのは来年の秋になるだろう。 萩の花に触れなくなって今年で2年目。 以前住んでいた家には広い庭があり 私はそこに白萩を植えていた。 初秋の頃になるとひとつまたひとつと咲き始め まるで雪を散らしたように美しかったことを覚えている。 今の家には全くと言って良いほど庭がなく わずかに小さなハーブを育てているだけに過ぎない。 それも道路にはみ出さぬよう、 家の外観とあうよう、様々気遣いをしながらのものである。 萩は 咲き初めが実に良かった。 殊にその年初めての花を見つけたときなどとても嬉しく 庭先に家族を呼び寄せて一緒に眺めていたものだった。 ひとつの花が咲き初めると次々に咲き始め やがて株全体が白く染め上がっていく。 濃い緑の葉と柔らかな白の花びら。 華やかではないけれど 本当に美しかった。 それでも 溢れんばかりに咲き誇るさまを見ていると その花びらひとつひとつが 萩の抱える想いのようにも感じられ そんなにも多くの想いを抱えて辛くはないのかと 思われる日もあった。 ・・・いつしか花は散り始め その根元に多くの花びらが積み重なっていく。 私はその散った花びらに触れるのが好きで 地面の上の花びらを集めては両の手に乗せてみたりしていた。 晴れた日にはほのあたたかく かさかさと音を立て 雨上がりにはしっとりと濡れていた。 立秋を迎え 風が変わり影も長くなってくると 萩は次々に散っていく。 夜中眠れぬ時には 必ずと言ってよいほど庭に出て 萩のそばに佇んでいたものだった。 強い風にあおられ花もほとんどなくなっていく。 夜中 花の散ってしまった萩を見つめ 容赦なく時が過ぎてゆくのを思った。 確かに桜の花が散りゆくのを見るのも淋しい。 けれどそのあとには緑眩しい季節が駆け足でやってくるではないか。 萩の散ってしまった後には 晩秋、そして長い冬が訪れるだけである。 大体において 秋の花々が咲き初める頃にも何かに急かされるような心持ちになるのだけれど 散りゆく時には 何か、もっと淋しくなる。 ひとの人生を想うからだろうか。 まるで人生の終わりにさしかかったような気持ちになり 確かに 急かされる思い・・・それもあるのだけれど もっと切実な淋しさ 誰しも命の奥に秘めて持つ孤独を感じるからだろうか。 萩に触れなくなって2回目の秋。 萩の花に触れることができないと言うことが こんなにもさみしいものであったとは。
by miyamagakure
| 2008-09-10 16:44
| やまと花
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